病院で暴れてきた。

と、書くと、何事?と言う感じがするが、これ、事務所の人たちの、口癖。
病院を建設する側、注文をつける側、の葛藤を簡潔に述べた言葉。
こっちが正しいと思うことをわかってもらえなくて、どういう手段でぶちまけてきたかは私はわからないが、「さっき病院で暴れてきた」と言う言葉を何度も聞いたことがある。
同様に「現場で暴れてきた」というのもよく聞いた。
逆に「一度作ったものを変更になったから壊せと言うと職人が暴れて困る」というのも聞いたことがある。
で、何が言いたいかというと、じつは、私も病院で暴れてきたのだった。
原因は「テレビカード」。
たった2日しか入院しないのに(そのうち一日はナースステーション横のテレビもない部屋)T治郎がテレビが見たいと言うので(退屈だし、かわいそうだから)清算機で、使ってない分は払い戻しできることだし、¥1000払ってカードを買ったのだ。
1日しか使ってないから、退院するとき清算機に通せば¥800帰って来るはずだった。
ところが。
清算機は残り¥0と表示、何度もくびをかしげて機械に入れなおしていると、周りの入院患者のおっちゃんたちが、「あんた、わるいことしたらあかんよ、¥0とでとるにか。使い切ったカードでお金かえしてもらおうなんていかんよ。」「あんたが、まちがっとる。機械は正直だ」と大勢でからかうではないか。頭にきて「昨日買って、今日帰るのに、一日しか使ってないよ、悪いことなんてなにもしてないよ」というと、「そんなら、もういっかい機械とおしてみ」と、ますますからかう。そこで、思い当たったのが、カードをテレビカード挿入口に入れたら、スーっと出てきたのをT治郎が不思議がってまた押し込んで、また出てきたのでまた押しこんだ、というのを思い出したのだ。
その後私も押し込んでみた。なぜかって、カード挿入口の横に白いボタンがあって、「カード取り出し」と書いてあったからだ。
取り出しボタンを押さないのに、カードが出てきた。テレビはつくのか?しかも、あと何時間つかえる、という時間を表示する液晶の数字が薄くて見えない。
調子悪いのかな、と思ったけど、テレビは見れたし、点滴をしているT治郎をずっとみはってなくてはならないし、(しょっちゅうトイレに行きたがるし)看護婦さんは忙しそうだし、別にいいか、と思ったのだ。
そして、退院するとき清算機を通すと、コレだ。
実は、カードを押し込んだとき、テレビが1日見れる、という状態になり、もう一度押し込んだら、2日見れる、という状態になるのだった。
結局、次に入院した人が、タダで4日間テレビを見れるわけ。
清算機の意味が全くない。
コレは、だれでも知ってることだ、知らないあんたがわるいのだ、とおっちゃんたちは言う。
そこで私は怒った。「入院生活になれている人には常識かもしれないが、初めてカードを買った人にもわかるようにテレビのところには何も書いてない。販売機の横に小さい字で書いたものが貼ってあるが、子供が点滴をかまわないか、どこかに走っていかないか、見張っていなくてはならない状態で、そんな細かい説明読んでる余裕はない。(しかも、あとで、読んでも、カードを入れたらテレビにお金を取られていくというようなことはどこにも書いてないのだった)」6人部屋で、部屋の主からいろいろ教えてもらえる人はすぐにこれがわかるのかもしれないが、私は子供が入院するたびにテレビカードを買ったが、誰も何も教えてくれなかった(個室だし)
テレビのところに一言、説明が書いてあれば、5回出し入れしたら5日分予約されてしまい、お金は返ってこない、というのがわかると思うが、コレが業者の手なのだろうか、そんなことはどこにも書いてないのだ。
怒っていると病院の人(オバサンだったが、看護婦さんでない、事務かなんかの人)がきたので、話をすると、「はい、カードを出し入れすると、予約され、お金は返ってきません」と涼しい顔で言う。「テレビのどこにも書いてないじゃない。子供を部屋に残して急いでカードを買いにきて、こんな小さい字の説明ゆっくり読んでられないよ」と言うと「では、婦長を通して話しておきます」と言って立ち去った。まだ怒っていると今まで私を悪者扱いにしたり、からかっていたおっちゃんたちが「あんた、あたまに来たなら、そこにご意見箱あるから、書いて入れたら」と言うので部屋に戻り、書く紙もないので(緊急入院だもの、何もないよ)たまたまリュックに入ってた本の表紙についてる帯をむしってその裏に書いた。
もちろん、住所氏名も書いて、「私よりももっと小さい子供を連れて入院して大変な若いお母さんにもわかるように、部屋の、テレビのところにちゃんと書いてください」と書いた。
今日仕事に行き、M田さんにこの話をすると、やっぱり、前に子供が入院したとき使い方がわからなくて、5日以上入院してたから別にわからず終わったけど、そんなことだったんだね、と驚いていた。