強い男たちの雄叫びがこだまする谷

水芭蕉

なんと言ってよいのやら、とうとう探していたものが見つかったと言ううれしさで今日は満足な一日だった。おとといだか、じき近くまで行きながら、コゴミに会うことができず(全くある気配のないところ)時間切れでひきかえし、今日は5時半に起きれたので余裕で谷を思いきって下って行ったのだ。確かに南を向いてはいるがほんの一部。あとは複雑にうねっている。その斜面にはフキしかなく、難儀してトラバースしているわりには来る価値のないところだ、とイライラし始めた頃、意表をつくような巨大なゼンマイが立ちはだかっていた。1メーターくらいあるんじゃないかと思える迫力。(実際にはそんなにないと思うけど下から見上げているから大きく見える)残念なことに男ゼンマイだった。男ゼンマイをとると、次の年からそこに出なくなる、と言われており、とるわけにはいかないのだ。でも、いまひとつわからないのは、男ゼンマイ、というのは葉の部分が厚ぼったい感じのやつだ、位にしか思ってない自分は、その厚ぼったいのが1本と後の数本はふつうの薄い葉ので束になっているものばかりしか見たことがなかった。今までは…ところがこの谷のものは多くがほとんど男ゼンマイで根元のほうに申し訳程度に普通のゼンマイが生えている、というものだった。普通のほうを女とする、そうすると通常は男ひとりに女が大勢、と言うハーレム状態なのにたいしてこの谷のものはほとんど男の世界なのだ。しかも剛健な男たち…谷の急斜面のはるか上のほうに聳え立ち、「うおおおおぉぉぉぉおおおおお〜!!」と雄叫びをあげているかのよう。ちょっと宮元武蔵かも。とすると、3本しか発見しなかったがスッと伸びた背の高いワラビは佐々木小次郎ということにしておこう…よく見るとあちこちにごく一般的なやや太めのゼンマイも見られたので喜んで採取。やっぱりここは私がにらんだとおり、いいところだ。でも、肝心の幻がない。ま、いいか、今日はゼンマイで。ところが谷を下りたい気持ちになり、下りていくと、平らなところが少しと、90度近い泥壁の繰り返しなので、登りは得意だが下りが下手な私はこういうときたいてい落ちてしまうのだ。下が硬い岩だったり、スノーブリッジだとか危険がある場合は絶対落ちれないので何にでもつかまって落ちないようにするのだが、ここは柔らかそうな土だけなので思いきってどんどん下っていくと、









と落ちてしまった。でも、うまいこと登山靴でたったまま滑り落ちれたのでラッキー。たいがいしりもちをついたり、ズボンを泥だらけにするのだが…とん、と足をついたとたん思わず「ウキッ!」(人間の言葉にならないかんじ)と叫びたくなるような光景。なんとあの探し求めていたコゴミがあったのだ!ちょっと伸びすぎているがまあ採ろう、あるところにはあるんだな〜と、また下っていくと、こんどはもうちょっと出たばかりのいいのがたくさんあった。よろこんで採っていたがどうやら、自分の前にも採った人がいるらしい。おやじ、なかなかやるな。しかも、ちゃんと全部とらずに一本ずつ残してとっている。そのオヤジの採ったあとは何ヶ所かあり、そのうち自分の採ったあともあるようになったので引き上げるとする。それでも、まだたくさんでそうな感じなので先が楽しみ。ツクシもあったのだがこれがなんとも言えない柔らかくて普通のツクシと違うのだ。やんごとなきお方、という感じ。でも、うちに帰ったら一般的なツクシと混ざってしまった…そして、こんなに満足した自分だが、うちにかえり、ついに幻を見つけた、と言うと、長男は「行者ニンニク?」と言っていた。(我が家では普通は幻と言えば行者ニンニクをさすのだ。さすがhoochie家のこども)苦労して見つけたコゴミをおいしくいただいた、のだが、家族は「コゴミか」といったふうだった。ま、そんなもんでしょう…
しかもデジカメ忘れて写真はない。たいていいいときにはカメラがない、仕方がないから水芭蕉の写真でも載せてみる。これはその近くにある公園っぽいところにさいていたもの。天然かと思って激写したのだが、最後に通ったところに「この水芭蕉は栽培しているものです、立ち入らないで」と書かれていた。